基調講演

学びの社会実装

情報技術を活用した学びの研究成果は,社会実装の観点で今大変重要になっています.

小中学校での一人一台端末の活用,高校の情報Iの必修化と入試,大学での数理データサイエンス教育の展開,教育DXや教学IRを通じた学びの最適化、社会で求められるリスキリング教育,全教育課程での生成系AIの活用など、本当に多岐にわたるトピックで,我々の研究成果が期待されています.本学会が向き合ってきた学習を科学する立場から,しっかりとこうした社会課題に向き合い,その成果を分かりやすく社会に示していくことが重要です.

本講演では, 「学びの社会実装」をテーマに,幾つか事例も交えながら,考えてみたいと思います.
この言葉は二つの意味を込めた造語です.

一つは,我々の研究の直接的な成果としての社会実装という意味です.これは,本学会の研究成果である教育に関わるシステムを,如何に上記の社会課題に適用していくかを指します.もう一つは,研究成果を通じて改善された学習の成果,すなわち人材育成の社会実装です.我々の研究は,情報を活用した学習デザイン・モデリングを活用することで,授業や学びの質を本質的・汎化的に高めることを目指しています.これは実証的で実践的であるべきで,その成果は人材育成の形で現れるため,多くの教育現場で求められることでもあります.

今回は、二つの意味を,実際の社会課題の事例に当てはめながら,皆さんと一緒に考え,本学会が貢献できることについて改めて考えてみたいと思います.

教育システム情報学会 会長 

小松川 浩(公立千歳科学技術大学)